アダルト・チルドレンと家族 学陽書房1553円
著者:斎藤 学 さいとうさとる
1941年東京生まれ。
精神科医。
家族機能研究所代表。
アルコール依存症、児童虐待、アダルトチルドレンなどアディクション研究の第一人者。
P37
子どもに暴力をふるうような親に出会ってしまった子どもには、さまざまな問題が生じてきますが、そのひとつが攻撃性の問題です。親の攻撃性に直面しながら育った子どもは、先ほども申し上げたように、「不安と怒りを調節する能力」の発達が悪くなりますから、当然攻撃的になります。これが「犠牲者が加害者になる道」といわれるものです。
これは、自分が子どもを作ったときに子どもを犠牲者にすることもあるし、同世代のなかでも、例えば仲間グループの中でのいじめ行為になって現れたりします。妻との関係で夫婦間暴力の加害者の役割を取ることもあるでしょう。
この件については男の子と女の子との間で著しい差異が見られることがわかっています。簡単にいうと、女性のほうが自分自身を破壊するような行為、たとえば手首切りのような自傷行為に走ったり、うつ病がひどくなって自殺をはかったりといったように自分を滅ぼしていくようなかたちを取りやすい。一方、男性のほうは、他者を責めて暴力をふるい、文字通りの加害者になることが多いのです。
夫婦間暴力を繰り返す父親と母親のもとで育った子どもの場合、ほとんどの男の子は成長してから加害者の夫の役割を繰り返すことになります。これに対して殴られ、罵られ、虐待されている母親を見て育った女の子のなかから、自身が母親と同じような被虐待妻の立場に拘束される女性が出てきます。事実、私の周囲にいる、長期間夫の暴力にさらされる女性たちのほとんど全員が虐待される母親を見て育った女性たちです。
性的虐待の場合は、もちろん女性が被害者になることが多いのですが、被害者には著しい感情鈍麻がみられるのが普通です。ただし、その一部では売春のような反社会的な行動と結びつく場合もあります。