毒になる親 毎日新聞社1600

 

著者:スーザン・フォワード

米国南カリフォルニアを中心に医療機関のコンサルタント、グループ・セラピスト、インストラクターをつとめながら、アメリカABCラジオの視聴者参加番組のホストとしも活躍。

 

訳者:玉置 悟 たまきさとる

1949年生まれ。

翻訳家・文筆家

 

P314 訳者あとがき

 最近日本では、子供がおかしくなってきているといわれている。だが子どもは生まれてくるときには無垢のまま生まれてくるのであり、それが育っていく過程でおかしくなるというのは、原因が大人にあるのは明らかであり、それを“社会”のせいにするのはごまかしである。社会というのは「家庭」という最小単位が無数に集まって成り立っている。もし子供がおかしくなってくるのなら、その責任のほとんどを負わなくてはならないのは家庭であり、つまりは親なのである。経済成長(といえば聞こえはいいが、ひらたく言えば金儲け)に国をあげて狂奔してきた結果が、温かい愛情を与えられずに育てられた子供にあらわれているのだ。

 本書のタイトル、「毒になる親」とは、要するに子供を虐待する親のことである。だが「捕虜虐待」や「動物の虐待」などの言葉があるように、日本語で「虐待」というと、一般にはその語感から、どうしても折檻など肉体的な暴力や食事を与えずに放置するなど拷問のようなことばかりイメージされてしまうことが多いようだ。実際、マスコミが取り上げる“事件”もそういうケースばかりだし、一般書として出版されている書物においては興味本位に性的虐待のしかも極めてまれなケースを扱ったものばかりというのが実情だ。

 子どもの虐待には、「肉体的な虐待」、「精神的な虐待」、「性的な虐待」、「義務の放置」などがあるとされているが、そこでよく見逃されがちなのが、子供の心に大きく傷を負わせる「精神的な虐待」である。日本でまだ一般に理解されにくいことは、事件になるようなセンセーショナルな“虐待”でなくても、心の虐待は子どもの人格を破壊し、健康的で正常な心の成長を阻んでしまうということである。その結果、成長後の子供の人生を苦しみに満ちたものにしてしまい、たくさんの不幸を作り出す。また、心の虐待は大人になっても続いていく。つまり「精神的な虐待」は子どもの時代だけでは終わらないのである。本書には中年を過ぎてもまだそれが続いている被害者の例がいくつも登場する。