永遠の仔(上・下) えいえんのこ 株式会社幻冬舎 上19993101800円 下1900

 

著者:天童荒太 てんどうあらた

1960年愛媛県生まれ。

86年「白の家族」で第13回野性時代新人文学賞、93年「孤独の歌声」で第6回日本推理サスペンス大賞優秀作、96年「家族狩り」で第9回山本周五郎賞を受賞。

 

P389 聡志の台詞

「親は、子どものためだと言いながら、実は都合のいいところで、自分の欲求や願望を優先させてる。なのに、すべては子どものためだと言い訳して、子どもが、ありがたがらないと、恩知らずのように怒る。むしろ子どものほうが我慢して、親に気をつかってることだって多いのに、親の親の心がわからないと叱る。ただ、親も本当はよくわかってないんだろう。何が最終的に幸せなのか。誰だって、教えられた以外のことはできやしない。幼い頃に与えられたものや、環境から身につけたものを、どうしたって繰り返すに違いないんだ。親も、子供時代、ずっと親の言うこと、することに、我慢し、従い、理不尽な命令にも、いやだと言えずに過ごしてきたんだろう。親のしてくれることが、どれだけ的外れでも、ありがたがらなきゃいけなかったんだろう。でないと、愛してもらえなかったからさ・・・・・・。そうした子どもが、親になったとき、今度は自分が子どもに愛を与える力も、奪う力も持っているから、その力を無意識にもてあそび、子どもを支配しようとする。だから、子どもが言い返したり、反抗したりすると、腹が立つ。自分を抑えきれなくなる。ことに母親は哀れさ。男は外に出て、好き放題しても、男は所詮子どもだからと許される。女はそうはいかない。親になったって、人の子には違いない。甘えたい時だって、べったり頼りたいときだってあるはずなのに、夫や夫の家族からまで、母親としての役割を求められる。年齢に関係なく、親となったとたんそうなるんだ。結局、母親にとって、自分が心から安心して甘えられる存在が子どもになっているんだ。自分が子どもに戻れる相手が、我が子しかなくなってる。だから、いっそう子どもの反抗が理不尽に感じられるんだろう。だけど、子どもだって、やられっ放しじゃない。我慢ばかりじゃ、いつかは、ふざけるなと怒るのも、当たり前だろう?親も確かに大変だろうさ、苦労ばかりかもしれない。だからって、立場や感情を無視した扱いがつづけば、子どもだって、愛情ばかりを抱いちゃいない。本当は愛したいはずの親が、愛情をかけるのに値しない親だったら・・・・・子どもだって、泣きながらでも、やり返すさ」

 

p113 イフェメラの台詞

「ときどきこの世界って、親が大人とは限らないってことを、忘れるみたいね。子どものままでも、親になれるんだから。親ってだけで、子どものすべてをまかせるのは、子どもに子どもを押しつけてる場合もあるのよ。子育ては競争じゃないって伝えるところが、どうしてないの。支える道も作らずに、未熟な親を責めるのは、間接的に子どもを叩いているのと同じかもしれないのに」