「家族」はこわい 新潮文庫 400円
著者:斎藤 学 さいとうさとる
1941年東京生まれ。
精神科医。
家族機能研究所代表。
アルコール依存症、児童虐待、アダルトチルドレンなどアディクション研究の第一人者。
P250
現代の父親と子どもたちの事件
現代家族の父親は、家を離れて稼ぐことを唯一の我が仕事と思い込み、子の哺育・養育から遠ざかることによってチンパンジー者会の成熟雄に退行しました。息子たちの多くは父親の不在によって社会的掟の内面化に失敗し、その一部は父親から伝達されるべき掟を求めて国家権力と衝突します。つまり犯罪を犯します。彼らは近親姦タブーを内面化することにも失敗していて、情緒的近親姦に走って再び母の子宮(家)にもぐりこもうとします。すなわち引きこもりです。最近の少年たちの犯罪は、こうした家族構造を土台とし、これに地域社会の崩落による犯罪抑止の歯止めの欠如が重なって生じたものと思います。
息子たちの情緒的近親姦に対応するのは、父親による娘への近親姦(これは単に情緒的なものではない)です。家から離れて娘の哺育にも携わらなくなった父親は、娘に女性を見て、これに「父の特権」を行使します。
そこまでに至らないまでも、父のお気に入りのかわいい娘(good little girl)の神話(娘の情緒的近親姦)に、「普通ではいや」という現代女性に固有の野心が結びつくと、摂食障害(拒食と過食)が生じます。彼女たちの痩せた身体は、「こんな私をだれか抱えて」という訴えなのですが、しかし彼女たちの意識は意気軒昂と仕事上の達成(男=父親の理想であったもの)を目指しています。そしてその達成に挫折すると、自らをなじり、そしり、傷つけ、辱めます。女性の性を売り物にして辱めることに倒錯した喜びを見出したりします。