子どもの愛し方がわからない親たち 講談社 1650円

著者:斎藤 学 さいとうさとる

1941年東京に生まれる。慶應義塾大学医学部を卒業。東京都精神医学総合研究所研究員を経て、現在は家族機能研究所および同研究所付属斎藤学診療所の所長。アルコール依存、児童虐待、過食症などに取り組み、これらの依存症に悩む人たちのための自助グループなどを援助。行動する精神科医として活躍中。雑誌「アルコール依存とアディクション」編集主幹。

著書に、「家族依存症」「『家族』という名の孤独」「家族の中の心の病」、訳書に「買い物しすぎる女たち」「食べすぎてしまう女たち」などがある。

家族機能研究所 〒106-0045 東京都港区麻布十番2-14-5  TEL03-5476-6041

 

P72 

 「トム・ソーヤの冒険」に出てくるハックルベリィ・フィンは被虐待児である。彼はアル中の父親の暴力を逃れて、木の上や樽の中に住んでいたのである。マーク・トウェインは「トム・ソーヤの冒険」を書き終わった直後から、原作では脇役だった浮浪児ハックを主人公に「ハックルベリィ・フィンの冒険」を書きはじめた。

 

P73 

 それで、判事さんと後家さんはだね、法廷に訴え出て、裁判によってとうちゃんからおれを引き離し、自分たちのどっちかおれの後見人に決めてもらうことにしたんだが、裁判じゃ、この町に来たばっかりの新任の裁判官にあたっちまって、その裁判官とうちゃんのことなんにも知らねえで、裁判所としちゃ家族の問題に干渉したり、子供を引き離したりするのは望ましくねえ、なんて言いだしちまったんだ。それで、彼が言うにゃ、自分としては、子供をその父親から引き離すことは認めたくないってんだ。だもんで、サッチャー判事も後家さんも、この問題はあきらめなきゃならねえようになっちまった。(参考文献26)

 

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 父親にヒッコリーの棒で殴られ続けたハックは、気転をきかせて小屋を逃れ、黒人奴隷のジムと筏でミシシッピー川を下るというのが物語の本筋だが、それはさておき、ハックの“親権”をめぐる大人たちの争いは興味深い。次の章で述べるように、現代の日本の虐待する親たちは、ハックの父親とまったく同じことを申し立てるし、事情のわからない裁判官による見当違いの判決も、このとおりの形で反復されているからである。