数字 

3歳児神話 (さんさいじしんわ)

 「子どもが3歳ごろまでは母親が子育てに専念した方がよい」とする育児の考え方。欧米の研究を基に育児書などで強調され、1960年代に広がった。幼児を抱える母親を呪縛(じゅばく)して子育て不安を助長し、女性の社会進出を制限する一因となってきた。 98年の厚生白書が「その根拠は認められない」と指摘したが、最近の子どもの問題行動多発も重なって日本では依然根強い。一方で「母子カプセル」といわれるような密室育児をやめるべきだとの批判もある。国立精神・神経センター精神保健研究所の菅原ますみ室長らは16年間の追跡調査で「母が幼児期に働きに出ても子の発達に悪影響を与えない」との結果をまとめ、この神話を否定した。

[←先頭へ]


 
 C 

CAP (きゃっぷ:Child Assault Prevention)

 子どもへの暴行防止という意味。CAPプログラムは、子どもたちの人権意識を育てる事によって心を傷つける暴力、体を傷つける暴力、性的な暴力から身を守る方法を教えるプログラム。
 このプログラムは1978年にアメリカのオハイオ州コロンバスにあるレイプ救援センター(Women Against Rape)で開発された。小学校2年生の女の子がレイプされる事件がありその事件を知ったまわりの 子どもたちがおびえて、情緒的に不安定になることがあり、WARのメンバーは、子どもたちが安心感を取り戻すためにさまざまな分野の専門家の協力を得て、CAPプログラムを作った。
 CAPプログラムは、アメリカ国内200以上の市や町の公立、私立の幼稚園から高校までの授業のカリキュラムのひとつとして実施されている。アメリカ国内での広がりにはフェミニストの女性たちが大きな役割を果たしている。国外ではカナダ、コスタリカ、クロアチア、イギリス、ドイツ、バハマ、アイルランド、日本、キルギスタン、モルドバ、オランダ、ニュージーランド、スロヴェニア、ユーゴスラビア、で実施され、世界15カ国に広がっている。
 日本には1985年、初めて紹介された。1995年に、CAPプログラムを実施できるCAPスペシャリストの養成が始まり、養成訓練を受けたCAPスペシャリストは各地域で独自にグループを作り活動を始めた。
 現在、北海道から沖縄まで100以上のグループがあり、それぞれに各地の学校や社会教育、福祉施設などで子どもにもおとなにも楽しく分かりやすい防止教育を行っている。

[←先頭へ]


 
 あ 

アダルト・チルドレン(AC) (あだるとちるどれん:adult children of alcoholics)

 アルコール依存症患者の子供として育ち、現在は成人に達した人々のことをいう。ACOA、AC、またはそのまま英語読みで、アダルト・チルドレンという。AC問題は1970年代からアメリカの専門家の間で注目されるようになり、1980年代から一般に知られるようになった。酒害家庭の子供たちの一部は、非行などの問題行動を起こすが、大部分は目立たずに混乱した家族システムに適応して少年時代を生きのびる。しかしそのような子供たちも思春期以後に、特徴的な感情と行動の障害を起こしやすい。
 酒害家庭の子供たちは、成長期に、歪んだ家族関係の中で、「生き方」を学ぶ。「よい子」ほど、早くから、徹底して、酒害家庭の暗黙のルールを身につける。たとえば酒害家庭では、不仲の両親が問題の本質について真剣に話し合うことはない。その場限りの酒害対策が最優先課題になり、その他の家庭内の問題は無視または放置される。子供たちは、「小船を揺らすな」と教えられる。家庭の秘密を外に漏らしてはならない。両親を困らせるような余計な質問をしてはならない。やがて彼らは、自分の心配や悩みを話すことをやめ、問題に正面から立ち向かうことを避けるようになる。また、両親も身近な大人たちの誰も救い出してはくれない苛酷な状況で、彼らは、期待して裏切られるよりは、誰も信用しないことを選ぶ。さらに、不安になったり、悲しんだりして、余計に両親を困らせたり、惨めな思いをするよりは、自分の感情自体を押し殺すことを学ぶ。
 しかし、幼い彼らが自分に課す「しゃべるな。信じるな。感じるな」というその不文律は、成人して後も不健康な感情、思考、行動の癖として残り、それ自体が彼らの人生を縛る。一般に、ACは自分の感情を認めたり、表現することが苦手である。また彼らは、考え方に柔軟性を欠き、過度に支配的である。あるいは逆に他人に依存的で、自分の人生を主体的に選択することができない。しばしば罪悪感と恐れの感覚に脅かされ、抑うつ感に悩み、他人を信頼する能力を欠いている。大人になった彼らは、かつて体験したことがない「正常な対人関係」を手探りで演じようとして、失敗を重ね、疲れて挫折する。ACのこのような障害は、治療あるいは正しい対応によって、回復することができる。また、親のアルコール問題に早くから対処することによって、その次世代の子供たちの成人後に起こるこれらの問題の予防も可能である。
 初め、アルコール関連問題として報告された「AC症候群」は、その後、機能不全家庭で育ち、成人した人々に共通する問題として認識されるようになった。

[←先頭へ]


アディクション (あでぃくしょん:addiction)

 熱中すること、耽溺(たんでき)、熱狂的傾倒、常用、麻薬常用癖、嗜癖(しへき)などと訳され、「ある習癖への耽溺」を意味する。一言でいうと個人の健康な生活を脅かすようになった不適切な習慣のこと。
 イメージのしやすい言葉を並べると、アルコール依存症(中毒)、ギャンブル依存症、過食、拒食症、仕事依存症(ワーカーホリック)など。日常生活から逃避するための行為が、習慣化し、自己のコントロールを越えてしまい、生活に支障を及ぼすようになったもので次のように分けられている。
1、物質嗜癖
 睡眠薬、麻薬などの薬物や、タバコ、酒類など。食物などの物質を摂取することに関わるもの。薬物中毒、アルコール依存、過食、拒食など。
2、過程(プロセス)嗜癖
 ギャンブル、一連の性倒錯、仕事への過度な没入、買い物などの行為に関わるもの。ワーカーホリック(仕事依存)、ギャンブル中毒、SEX依存など。
3、人間関係嗜癖(共依存)
 依存する他人を支配することによって充実感を持つ(人に頼られたい、依存されたい)側の人間と、他人を心配させ続けることによってその人を支配し続ける(人に甘えたい、依存したい)側の人間との間の硬直した二者関係のことを指す。最近は上記のニ者関係を理想の人間関係と深層心理で求めつつも、見つけられない片側だけの人間の心の葛藤自体を指すこともある。

[←先頭へ]


インセスト・タブー (いんせすとたぶー:Incest Taboo)

 人間社会において、特定のカテゴリーに該当する親族との結婚や性的関係を禁じる社会的規範のことで、あらゆる社会で普遍的にみられる。インセストは、近親婚や近親相姦と訳される。またタブーは、禁忌と訳されるように、たんに禁止というのではなく、その社会の成員すべてが規範をおかすことに強い怖れや忌(いみ)の感情をいだき、順守することが当然とうけとめているものである。人間以外の霊長類やその他の生物種にも、母子間や兄弟・姉妹間の性行為をさける事実があることはよく知られている。しかし、こうした動物のインセストの回避とインセスト・タブーは、現在では区別してあつかわれている。それは、人間の場合にはタブーの対象となっているインセストの概念そのものが、それぞれの社会、歴史、文化によってかなりことなり、近親にかぎらず疑似的な血縁関係もふくまれるなど、恣意的(しいてき)につくられたカテゴリーといえるからである。母と息子、父と娘、兄弟・姉妹同士の性的関係は、ほとんどの社会で禁じられており、実際には血のつながっていない養子や義理の関係にも適用されている。

[←先頭へ]


 
 か 

クロスアディクション (くろすあでぃくしょん)

 「ドラッグストアーカーボーイ」という映画の中でジャンキーの主人公が援助施設に行った時にイライラして叫ぶ言葉がある。
 「俺達は薬が切れればアルコールに走るのさ。朝靴ひもを結ぶ為だけにな」という台詞。
 薬物依存症者が、薬物をやめると、今度は薬やセックスにのめり込んでしまうように、同じような嗜癖を数多く持っている人をクロスアディクションと言う。クロスアディクションの人は一つの病が治まってもそれは「ドライ」の状態であって、決して回復に近づいた訳では無く他のアディクションにはまると言われている。

[←先頭へ]


過誤記憶症候群(FMS):フォールスト・メモリ・シンドローム (かごきおくしょうこうぐん:Falsed Memory Syndrome)

  
 :斎藤学著「家族の闇をさぐる」(小学館)から
 過誤記憶ないし過誤記憶症候群なる名称は、家族内性暴力についての暴露が積極的に進められたアメリカ合衆国で、司法的判断の議論の中から生まれた。児童期に実父などからの性暴力の犠牲になった(と信じる)人々のうちには、記憶を取り戻した時点で加害者を訴追する者もいる。その結果、60歳代、70歳代になって平穏に暮らしている親たちが、すでに自立したはずの子どもたちから突然告訴され、犯罪容疑者とされるという事態があちこちで起こるようになった。こうした親たちは当然のことながら、回想のきっかけをつくった治療者たちを非難し、逆告訴する。こうしてエピソード記憶の再生というテーマは、現在もっともホットな科学的話題のひとつになっている。
 いずれにせよ、『ザ・カレッジ・トゥ・ヒール』や、これに類似の本を読んだ人々(主として女性たち)の中から、子ども時代の虐待の記憶を掘り出したと言い出す人々が増加することは避けられない。その一部が加害者(親たちを含む)を告訴するということになれば、これについての訴訟は急増することになる。こうした状況に対応して児童虐待の出訴期間を延長する州が増えるようになった。刑事事件としての出訴期間は従来どおり7年のままでも、民事訴訟の時効を虐待を「憶い出してから」3年以内と変更した州が1955年時点で23州に達している。
 こうした訴訟事例が増えるにつれ、「甦った記憶」や「遅延記憶」に対する批判も高まってきた。批判は特に「記憶の回復」に睡眠下での聴取やアミタールなど睡眠性のある薬物の静脈注射によって抑制を解いた状態での聴取に向けられており、州によっては、これらを用いた回復記憶については出訴しても受理しないという制約を設けている。批判者の中には、精神療法家が、患者に「捏造された記憶」を植え込み、それによって健康な家族が崩壊に追い込まれると主張する者もいる。
 批判者たちのうちもっとも過激なものは「過誤記憶症候群基金(FMSF)」である。これはある近親姦サヴァイヴァー(女性)の母親とその夫(娘によって加害者とされたアルコール依存者)の狂奔によって1992年にアメリカで設立された(その経緯については別の著書(注:『封印された叫び−心的外傷と記憶(講談社)』)に詳しく述べた)。これに、小児性愛を肯定する児童精神科医や心理療法家、エリザベス・ロフタスのような児童期性的虐待の被害者の発言に批判的な実験心理学者たちが加担することによって、この運動は世論に訴える力を持つようになり、加害者とされた親たちが精神療法家や精神科医を告訴するという事態があちらこちらで生じた。

[←先頭へ]


虐待の世代間連鎖 (ぎゃくたいのせだいかんれんさ)

児童虐待/親の連鎖に目を向けた施策を (山陰中央新報2001年8月31日掲載)

 精神医学や児童福祉の関係者の間に「虐待の世代間連鎖」という言葉がある。幼児期に虐待された心の傷(心的外傷)が親になった時、わが子への虐待となって表れる−とする考えに基づいた専門用語だ。
 欧米諸国は、被害児童の保護だけでなく、虐待した親への精神的なケアや妊婦へのカウンセリングなど虐待連鎖を断つ施策を次々に打ち出している。
 兵庫県尼崎市の虐待事件に、そうした背景があったかどうかは、今後の捜査などの結果を待つしかないが、続発する児童虐待を防ぐ手段の一つとして、国や地方自治体は親にも目を向けた施策を積極的に推し進めるべきだ。
 虐待事件が明るみに出るたびに、児童の保護の在り方や加害者への罰則強化などが叫ばれる。昨年秋に施行された児童虐待防止法は、そうした声を反映したものだ。
 だが、中身は、虐待の定義付けや児童相談所の機能強化、保護者に対する知事の指導・勧告権の付与などが盛り込まれたものの、虐待した親のケアや支援方法などについて触れておらず、抜本的な再発防止策としては十分ではない。
 米国などでは、児童虐待を防ぐには「虐待を事前に防ぐ方法」と「事後のケアを徹底する方法」の二つが両立してこそ根絶につながる−との考えが根付いている。
 日本では、どちらかといえば、被害児童の保護に重点が置かれ、虐待を繰り返す親へのアプローチが後回しされてきた。
 虐待連鎖対策は始まったばかりだ。来年度から「プレネイタル・ビジット」(出産前小児保健指導)という子育て支援制度のモデル事業が拡大され、全国四十八市町村で始まるのもその一例だ。
 小児科医が、子育てに不安を持つ妊娠中の母親からの相談に乗るシステム。育児不安を取り除くことで母親の子どもへの愛情をはぐくみ、虐待防止につなげるのが狙いで、欧米では広く普及している。
 また、ことし四月から全国百十四の児童相談所に精神科医を嘱託医として配置する厚生労働省の支援事業が始まった。
 親と子どもが再び一緒に暮らせる「家族再統一」を究極の目標とし、親の精神的な不安を解消することで虐待を思いとどめさせたり、やめさせたりする。
 これまで児童相談所と言えば、職員不足などもあり、児童の保護で手いっぱいというのが実態。親へのカウンセリングや精神的なケアを通じて虐待を未然に防ぐ試みは一歩前進だ。
 来年度には、児童福祉の職員OBらを「子ども家庭支援員」として家庭訪問させ、子育ての相談に乗る制度を導入する計画もある。支援員の必要数の確保や権限、手当など問題は山積しており、国や自治体の財政支援が欠かせない。
 昨年度の虐待相談件数は1万8千件を突破した。その数は、いまも救いを求めることもできず虐待に耐えている子どもが相当数いることを示している。
 同時にそれは感情を抑えられずに虐待を繰り返す親も相当数いることを意味する。子どもと親を救うには一刻の猶予も許されない。
 虐待に走る親の残酷な行為を取り上げて非難するのはたやすい。いま、必要なのは、虐待の背景を探り、再発の根を絶つ大人としての知恵と寛容さだ。「虐待連鎖」という忌まわしい言葉は一掃しなければならない。

[←先頭へ]


共依存 (きょういぞん:co-dependence)

 共依存とは、人間関係そのものに依存するというアディクション(嗜癖・依存症)。
 共依存症の人は、自分自身を大切にしたり自分自身の問題に向き合うよりも、身近な他人(配偶者、親族、恋人、友人)の問題ばかりに気を向けてその問題の後始末に夢中になる。身近な人の取らなかった責任を一生懸命代わりにとり、結果、現在の困った状況を身近な他人本人が決意して解決する必要を与えず、困った状況をそのまま続けるはめになる……あるいはますます困った状況に陥っていく人達のこと。
 アルコール依存症やギャンブル依存症、非行や暴力、買い物中毒、仕事中毒、絶えない人間関係のトラブルなどを抱えているため、共依存症の人の「共依存」という問題がクローズ・アップされることは滅多にない。けれども、そういった見た目に派手な依存症や問題を抱えている人達の側にかならずといっていいほどいると言われている。共依存症の人達が問題の後始末を一生懸命してくれるので、「困った人達本人」は「困った状況」が「なんだかんだ言ってもなんとかなる」と無意識で感じています。このため問題を解決せずにほったらかしにし、悪化させる。この現象を指して共依存症者のことを「依存症の支え手(イネイブラー)」と呼ぶこともある。
 日本女性はとくに「我慢して尽くすこと」が美徳だとされているので、共依存症者が多いといわれている。ある程度までは「人間関係の潤滑油」ですが、共依存症者にとってその人生は他人の後始末、後始末、後始末……他人の責任の代行ばかりで自分のための人生を生きることができない。長期間の自己放棄や感情抑圧による不適応も心理的な問題とされている。

[←先頭へ]


子どもの権利条約 (こどものけんりじょうやく:Convention on the Rights of Child)

 「子どもの権利に関する条約」の略称。18歳未満の子供が年齢と能力に応じて、あらゆることについて自由に意見をいう権利をみとめ、あらゆる差別を禁止して、子供の人権を保障しようとする条約。1924年の「子どもの権利に関するジュネーブ宣言」、1959年の「子どもの権利宣言」を受けて成立。1989年に国際連合の総会で採択され、90年に条約としての効力をもつ(発効)ようになった。
 前文と本文54条からなり、生存、保護、発達、参加という包括的権利を子どもに保障している。その中には、子どもの「情報へのアクセス権」を定めた第17条や、子どもの「性的搾取からの保護」を定めた第34条などが含まれている。
 日本では94年3月に国会で、この条約の法律上の効力をもたせる確認(批准の承認)がなされ、同年5月22日に発効した。この条約は、直接的には戦争や自然的、経済的条件などによって飢餓や貧困の中にある世界の子供たちの救済や保護、障害児らの人権擁護、大人や親による虐待の防止など、さしせまった問題に対処することを目的としているが、基本となる精神は、子供を保護の対象としてだけでなく、市民的権利の主体として認めるところにある。

[←先頭へ]


子どもへの虐待 (こどもへのぎゃくたい:child abuse)

 保護の怠慢・拒否、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待などがあり、そのありようは、偶然でない、継続・反復性がある、通常のしつけの程度を超えているなどである。原因は親の不仲、経済的理由、核家族化や地域の人間関係の希薄化で、子育ての実際的、精神的協力が得られないことも大きい。アメリカではフェミニズムとの関連で1970年代から社会問題になっヘ振るわないと約束する。被害者は、加害者の約束を信じ、加害者の態度が殊勝である時には別れられないと思う。この段階が終わるとサイクルは自動的に繰返され、また緊張の高まりが起こる。痛ましいことに、このような状況から抜け出すことができないと思い、状況が悪化して手遅れになるまで別れない女性が多いようである。
 2001年10月から施行された「配偶者からの暴力防止及び被害者保護に関する法律(通称DV防止法)」は、さまざまな暴力行為の中でも、被害者に与える影響が重大で、救済に緊急性のある身体的な暴力に関し、その防止と被害者保護を図ることを目的とするものである。

[←先頭へ]


トラウマ (とらうま:Trauma)

 心的外傷。何かの出来事に不意打ちをくらうように遭遇すると、その処理がうまくいかず後遺症となって長期にわたり心の活動が低下し、現実的対応が困難になる。その状態と連関してかたられる出来事の体験を外傷体験という。 心的外傷後ストレス障害(PTSD) 外的現実の出来事から生じる外傷体験については、1995年の阪神・淡路大震災の後、心的外傷後ストレス障害(PTSD post-traumatic stress disorder)として注目されることになった。これは過剰なストレスに対する反応として生じる精神的な障害で、強い恐怖、驚愕(きょうがく)、絶望などの状態を呈する。 ストレス反応としては、外傷に関連した刺激を回避し、外界に対する反応性が低下する。睡眠障害や過剰な警戒心、強い抑うつ、不安症状がみとめられることも多い。そのケアについては安全感の確保できる対人関係の維持が重要である。カウンセリング、家族療法や小集団的アプローチ、コミュニティのネットワークづくり、適切な薬物の処方など多面的なケアが欠かせない。

[←先頭へ]


多重人格 (たじゅうじんかく:multiple personality)

 病名としては、解離性同一性障害とよばれる。まったく脈絡なく別の人格が出現して、本来のその人であるかのごとく振る舞い、またもとの自分に戻ることを繰り返す。「ジキル博士とハイド氏」は、小説の話であるが、実際の症例もいくつか報告されている。服装や化粧などによる変身願望の満足は、変身の意識が明確であるが、多重人格での人格交代は、本人の意識なしで起こるので病的な現象である。催眠状態で人工的に起こすこともできる。

[←先頭へ]


代理によるミュンヒハウゼン症候群(MSBP) (だいりによるみゅんひはうぜんしょうこうぐん:Munchausen syndrome by proxy)

 「病院を舞台にした虐待」とも呼ばれる。母親が自分の吐瀉物を子供が吐いたと訴えたり、子供を虐待して「けいれんを起こした」とあちこちの病院に駆け込むなど、症状はさまざまだが、母親によるものがほとんどで、被害の大半は乳幼児だ。入院中は片時も子供のそばから離れず、献身的に看病するという。母親に医療の知識があることも少なくない。 こういった症例は80年代からちらほら出始め、90年代後半からは年間数例が報告されるようになった。手口が巧妙で、病院を転々とすることも多いので、非常に見つけにくい。検査や治療という形での虐待を受ける子どもは、水面下に数多くいると疑われている。 欧米ではすでに毎年数百ものケースが報告されていて、社会問題になっている。

[←先頭へ]


 
 な 

ネグレクト(怠慢・放置) (ねぐれくと: neglect)

 ネグレクトは、児童虐待のひとつとしてみなされているが、乳幼児に適切な養育を行わなかった場合をいう。例えば、乳児が泣いても無視するとか、いつも強く叱りつけ子どもに不安感を抱かせるとか、病気なのに医師にみせないなど、極端な養育のあり方が問題とされる。海外では、子どもを車に置いたままコンビニエンスストアで買物をしたというだけで、保護者が逮捕されることも稀ではない。このようなエピソードは、身体的な虐待と異なり、一見しつけの行き過ぎや極端な育て方といった程度のものと軽くみられるが、その結果、子どもの精神的な発達が歪められ、将来の人格形成に大きな影響を与えることが指摘されている。ネグレクトを受けた子どもは、表情が暗く、ちょっとしたことでおびえたり過度に緊張したり、おどおどしているのが特徴である。このような場合には、子どもを保育所に通園、あるいは乳児院に入所させるとともに、適切な養育環境になるように母親を指導・援助していくことが望まれる。

[←先頭へ]


 
 は 

保健所・保健師 (ほけんしょ・ほけんし)

 虐待を行う親の中には、妊娠中から将来子どもが生まれたら虐待するであろうと予測可能な人もいる。例えば、精神関係の病気を持っている方の中には、病気のため、子どもが生まれても育児が充分に出来ないことがあらかじめはっきりと予測されるケースがある。このような場合、虐待が生じてから支援を開始するのではなく、妊娠とわかった時点で精神科医や産科医が本人の了解を得て保健部門(保健所や市町村の保健師)につなぎ、妊娠中から支援を開始し、虐待を予防することができる。小児科医は子どもを受診させるために来所する母親と頻繁に接触する機会があるが、平素から子どもへの関わり方を見ることでハイリスクの親をみつけることが可能である。そして、このような母親の行動が子どもにとって危険と感じられたときや、彼女が妊娠したことを知った時点で、同様に保健部門につなぐことができる。
 一方、生まれた子どもが未熟児や多胎児や先天異常児等の場合、育児困難が予想されるので、親の了解を得て早期に保健部門につなぎ支援を開始することができる。
 また、保健所の未熟児訪問相談(未熟児の親が希望すれば、保健師が家庭訪問をして、悩みを聞いたり、困っていることの相談にのり、育児が適切に行われるよう支援する)や発達相談(発達に問題がある子どもを医師、心理職、保健師、保母等がチームで関わり、必要な助言、指導を行う)、更に市町村の新生児訪問(生まれたばかりで育児不安のある母親が多いので、保健師、助産婦等が家庭訪問をして必要な支援をする)や遊びの教室(健診や相談等で見つかった、子育てに関してハイリスクな母親と子を集めて、保健師、心理職、保母等が集団や個で関わり母親の育児力を高め、子どもの発達を支援する)、その他の相談を通して得た情報をもとにリスク要因の分析等を行い、その結果を基にハイリスクな親の把握及びその支援をする力を強化することができる。このように母子保健情報を活用し、そこから見えたものを現場の母子保健事業にフィードバックすることで、子ども虐待予防力のある母子保健事業を作っていくことができる。

[←先頭へ]


保護責任者遺棄致死 (ほごせきにんしゃいきちし)

 刑法218、219条に定めてある。老年者、幼年者、病者などを「保護する責任のある者」が、その対象者を遺棄したり、生存に必要な保護をしなかったことを処罰する。保護責任者遺棄の罰則は3月以上5年以下の懲役だが、その結果、対象者が死亡した場合は、2年以上の有期懲役を定めた傷害致死と比べて重い方で罰せられるため、最高刑は15年になる。
(毎日新聞2000年2月22日東京夕刊から)

[←先頭へ]


 
 や 

揺さぶられっ子症候群 (ゆすぶられっこしょうこうぐん)

 乳幼児を強く揺さぶると視力などの障害を起こし、最悪の場合は死に至る恐れがある。これは「揺さぶられっ子症候群」といわれ、親に抱かれて強く揺さぶられたり虐待されたりする場合に発症する乳児の病気のひとつ。このような症例は、アメリカでは1960年代から被虐待児症候群(児童虐待)のひとつとして知られていた。脳が萎縮している乳幼児に生じやすく、健康な子どもの場合には少ないという報告もある。日本での報告は少ないが、被虐待児症候群に該当する症例があったという報告もある。激しく頭を揺さぶられると、頭蓋骨の内側にある硬膜と脳とを繋ぐ血管が損傷を受けて出血したり、脳が回転して脳全体が損傷を受けたり脳浮腫(頭部外傷)を生じて死亡することもある。あやすつもりが、はずみで